3.原爆ドームと爆心地
世界遺産にもなり、ヒロシマのシンボルともいえる原爆ドーム。
建物の遺骸ともいえるその姿から、核兵器の恐ろしさについて考えるのもいい。
有名になりすぎている感もあるが、虚心坦懐に見れば、原爆の被害を伝える力は大きい。
原爆を搭載したB29エノラ=ゲイ号は、特徴のあるT字型の相生橋を目標に原爆を投下した。
いま、被爆した相生橋は架け替えられて、欄干の石柱のみが保存されている。
相生橋の東のたもとにあったのが産業奨励館で、被爆後は原爆ドームと呼ばれている。
投下されたリトルボーイは実際には、少し東の島外科病院の上空約580mで炸裂した。
この地点を、爆心地 グラウンド・ゼロ と呼んでいる。ここには今も島病院があるのだが、爆心地の惨状を伝えるのは、説明プレートだけである。
ここに立って、空を見上げてみよう。
林立するビルに囲まれて、広い空ではないが、この真上、580m、1945年 8月6日午前8時15分、原爆炸裂。
それを思い描くことで、見上げる者の想像力にスイッチが入るであろう。
まさに、現地そのものである、爆心地。
そこに立つことで、被爆体験を、しっかり追体験できるはずである。
なお、蛇足であるが、よく誤解されていることについて、ひとつ。
漫画や、体験談でも、原爆が落下傘にぶらさがって落ちてくるシーンが出てくることがある。
実際には、投下に落下傘は使用されていない。
観測機から落下傘につけた観測機器が投下されたので、それを目撃した証言があり、原爆と誤解されたのであろう。
現実の被爆の中心である爆心地と、被爆のイメージの中心である原爆ドーム。
この両者をあわせてとらえることで、想像力はぐんと厚みを増すのではないだろうか。
両地点間の移動には、普通に歩けば5分とかからない。